アイオワ大学事例:公衆衛生大学院、Grafana Cloudで運用コストの98%削減と統合オブザーバビリティを実現

2026-08-101 min
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アイオワ大学は、10以上のカレッジと多種多様な研究プログラムを擁する、米国トップクラスの公立研究機関です。その中の一つである公衆衛生大学院(CPH)では、がん統計、集団健康、環境健康といった高度な科学的研究をサポートしており、これらを実行するためには膨大で信頼性の高い計算資源とストレージ環境が欠かせません。

このような科学的ワークロードを支えるITインフラの運用管理を、CPH内ではわずか3名のITスタッフが担当しています。彼らの監視対象は、物理サーバーやハイパーバイザーから特殊な研究用アプリケーション環境まで極めて多岐にわたり、大学の研究者や教員たちは正確なインフラデータを頼りに、助成金の申請や日々の研究を進めています。

かつて同校では、自社運用するオンプレミス環境でGrafana OSS版を用いてインフラ監視を行っていました。しかし、監視スタックの継続的な保守管理作業に、少人数のITチームが忙殺されてしまう課題を抱えていました。

これを解決するため、同校はマネージドサービスであるGrafana Cloudへの移行を決断し、インフラの運用効率を高めるための信頼性と拡張性に優れた監視基盤を構築することに成功しました。

移行にあたって、不要なインジェストデータを手作業で整理して約63万件から約4,000系列へと削減した結果、オンプレミスとAWSの双方に散らばる全システムの可観測性を極めてシャープに可視化できるようになりました。さらに副次的な効果として、オブザーバビリティにかかる運用コストを98%以上削減するという、劇的なコスト最適化を達成しています。

現在では、Grafana Cloudが提供するダッシュボード、アラート機能、および将来予測型のインサイト機能を活用し、3名のITスタッフがより確固たる安心感を持って複雑な学術研究用ワークロードを支援できるようになりました。さらなるステップとして、インフラ部門と研究組織の双方に真の「単一の監視画面」を提供すべく、ログの統合管理やクラウドコストを可視化するダッシュボードの拡張も進めています。

CPHのシニアシステム管理者であるJacob Lewis氏は、「Grafana Cloudの導入は、考えるまでもない決定でした。オンプレミスで動作していた仕組みを完全に再現できただけでなく、複雑なサーバー管理の手間を一切伴うことなく、より優れた監視環境を手に入れることができたのです」と、その絶大な信頼を表明しています。


巨大でミッションクリティカルな大学インフラの挑戦

Jacob Lewis氏が2年前にシニアシステム管理者としてチームに参画した際、彼が引き継いだのは、データセンターのサーバー内部で部分的にセットアップされたGrafana OSS環境で、この環境は、あらゆるテレメトリデータを取り込んでいたものの、それを有効に活用するための実用的な視覚化がほとんど行われていませんでした。Lewis氏は当時を振り返り、「確かにシステム自体は動いていましたが、実質的には75%程度までしか構築されていない状態でした。サーバーから送信される無数のメトリクスのうち、99%は実運用において全く意味をなしていなかったのです。」と語っています。

システムの信頼性向上や、多様なインフラ全体に対するプロアクティブな洞察が求められる中で、インフラチームは監視戦略の抜本的な見直しを迫られていました。


過剰なデータと見えない障害:単一障害点としての自社運用監視

自社運用していたオンプレミス版で利用していたのGrafana OSSは、次第に運用上の大きなリスクとなっていました。何十万ものメトリクスを無秩序にインジェストしていた一方、障害の予兆を捉えるためのダッシュボードやアラートは皆無でした。さらに重大な懸念として、万が一大学のプライベートデータセンターがダウンした場合、クラウド上のリソースに関する情報も含め、すべてのオブザーバビリティ情報を失ってしまうことに気づきました。

実際に、大学の別の独立したデータセンターで発生した大規模なシステム障害が、この潜在的なリスクを白日の下にさらすことになりました。Lewis氏は、「もしデータセンターが停止したら、アラートもダッシュボードも、AWS環境の可視性も、すべて失ってしまいます。データセンターの停止自体が問題なのはもちろんですが、それに加えてオブザーバビリティまで失うべきではありません」と分析しています。

チームは代替手段の検討を開始しましたが、結論に至るまでに時間はかかりませんでした。運用保守の手間を削減しつつ、オンプレミスとクラウドが融合したハイブリッド環境全体を見渡せる、将来性の高いフルマネージドなクラウドソリューションへの移行が強く望まれたのです。


Grafana Cloudへの移行と、オブザーバリティの改善 

運用コストの増大とシステム停止時のリスクに対処するため、CPHは2022年2月から運用していた自社ホスト環境を停止し、Grafana Cloudへの完全移行へと舵を切りました。

自社運用環境はアップデートやインフラ管理といった継続的なメンテナンスが必要な上、システム停止時に原因究明のためのテレメトリデータにアクセスできなくなるリスクが常に付きまといます。こうした構造的な課題を解消し、特にリモートワークを頻繁に行う分散型チームにおいて安定した監視アクセスを担保するためにも、マネージドサービスへの移行は最優先の技術決定事項でした。

移行後の第1フェーズとして、チームはまずGrafana Cloud Metricsを利用したメトリクスの集約に着手し、これと並行してGrafana Cloud LogsおよびGrafana Cloud Tracesを用いたログやトレースのデプロイ環境の準備も進めました。

Lewis氏は既存のPrometheusスクレイパーの宛先をGrafana Cloudに向ける、いわゆる「リフト&シフト」の手法から移行を開始しました。しかし、データを送信した直後、かつての無秩序な設定が原因で送信データ量が急増する事象に直面しました。実に63万系列を超える過剰なアクティブメトリクスが検出され、このまま放置すれば月額換算で5,000ドルを超えるコストが発生する懸念が生じたのです。

そこでLewis氏は、インフラ内の全メトリクスを精査し、実際に価値をもたらす重要データのみに焦点を当てることで、不要な送信メトリクスの削減に努めました。その結果、送信データ量をわずか4,000 active系列という極めてスリムな規模まで削減することに成功しました。これはGrafana Cloudが提供している無料枠の範囲に収まる規模であり、本来の運用ニーズに完全に合致する形となりました。

(Jacob氏は、この最適化プロセスのために4週間におよぶ手作業での検証作業が必要だったと冗談交じりに話しています。不要なデータの増加を全自動で検知して制御できる「Adaptive Telemetry」機能の存在を移行後に知り、非常に驚いたとのことです。)

こうして送信データの信号対雑音比をクリアにした後、チームはこれまでの自社運用環境では実現し得なかった詳細なダッシュボード、高度なアラート、およびリソース予測メトリクスの設計に取り組みました。Grafana Cloudの扱いやすさは、チームに極めて迅速なイテレーションをもたらしました。Lewis氏は、新しいメトリクスを追加してからダッシュボード上で実際にそれを確認し、分析を開始するまでのプロセスが驚くほど簡単だったと強調しています。

「必要なデータをほぼリアルタイムで即座に手に入れ、すぐに可視化できる環境は、私たちの少人数運用においてまさに救世主のような存在です」と、Lewis氏は喜びを語っています。


予測型インサイト、堅牢なアラート、および単一の統合ビュー

Grafana Cloudへの移行は、CPHにおけるインフラ運用のあり方を根本から一新しました。

  • 全システムの統合ビューの確立: これまで欠落していた「単一の監視画面」を手に入れたことで、オンプレミス、仮想化環境、およびAWS上のすべてのインフラデータを一箇所に集約できるようになりました。Lewis氏は、「インフラ全体の稼働状態を見渡せるようになり、取得している統計情報が正確かつ最新のものであると確信を持てるようになったのは、本当に画期的な出来事でした」と語っています。
  • 能動的な障害防止: 整理されたクリアなメトリクスと高精度なアラート機能により、インシデントの発生を能動的に予測できるようになりました。将来予測に基づくインサイト機能を活用することで、3名のシステム管理者はより高度な開発やサービスの改善業務に多くの時間を充てられるようになっています。
  • 運用の手間の削減: データストアの保守、度重なるバージョンアップ、および可用性の担保といったバックエンドの運用負荷をGrafana Labsに委譲できたため、インフラチームは日々の保守作業から解放されました。
  • 圧倒的なコスト削減: 不要なデータのインジェストを排除したことにより、当初見積もられた想定オブザーバビリティコストの98%以上を削減し、高い費用対効果を維持したまま精度の高い監視環境を両立しています。
  • 研究グループとのデータ共有: 教員や研究者チームのための専用ダッシュボード構築も進めており、IT部門が間に入る手作業を省きながら、各研究インフラの状況を透過的に開示しています。「システムを単なるブラックボックスにしたくありませんでした。研究者たちにとっても、自分たちの重要な機器が現在どう動いているかを自分自身でいつでも確認できる環境が重要だったのです」と、Lewis氏はデータの民主化の効果を強調しています。


今後の展望:ログ、クラウドコストの可視化、そしてAWSとのさらなる統合

今後の目標として、Lokiをベースにした「Grafana Cloud Logs」を完全に導入しログ管理を一元化することです。これにより、真の意味での一元的なオブザーバビリティの実現に向けた取り組みをさらに進めていきます。

さらに、AWSの利用状況やコストに関するメトリクスをGrafana Cloudに直接取り込み、可視化するダッシュボードの構築も計画しています。これにより、クラウドネイティブの監視ツールへの依存を減らしつつ、異なるプラットフォーム間のデータを関連付けて分析できるようになります。

Lewis氏は、「Grafana Cloudは、私たちのすべての要件を満たせるだけの柔軟性を備えています。今後はAWSのあらゆる稼働データをGrafanaに集約していく予定であり、AWSはインフラの実行環境として使い、システム全体の可視化や相関分析は、すべてGrafana Cloudの画面上で統合的に行っていきたいと考えています」と、これからの設計への大きな自信を示しています。

CPHの科学研究プログラムがスケールを続ける中で、Grafana Cloudはこれ以上の人的リソースを割くことなく、ビジネスの進化に伴走する変化に強いオープンな監視プラットフォームとして活躍しています。


企業プロフィール

  • 業界: 高等教育・科学研究
  • 企業規模: 14,000人以上
  • 本社所在地: 米国アイオワ州アイオワシティ
  • 採用製品・プロジェクト: Adaptive Telemetry、Grafana Cloud、Grafana Cloud Logs、Grafana Cloud Metrics、Grafana Cloud Traces、Grafana Loki、Grafana Mimir、Grafana Tempo
  • 主な成果: 監視コストを98%削減、少人数IT(3名)でオンプレとAWSの完全な統合可視化を達成