Circles事例:Grafana Cloud上にオブザーバビリティスタックを構築し、DevOpsチームなしでARR 1,200万ドルのトラベル・ライフスタイルスタートアップを立ち上げ

2026-08-101 min
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Circles.Life社は、Grafana Cloudによって監視スタックを近代化しただけではありません。製品の開発やスケーリングにおける経済的なモデルそのものを大きく変革することに成功しました。その結果、ツールコストの削減やDevOpsにおけるボトルネックの解消が実現しています。さらに、専任のDevOpsチームを置くことなく、年間経常収益であるARR 1,200万ドル規模のビジネスを立ち上げて成長できることを実証しました。

「専任 のDevOps担当者を雇うことなく、たった一人も置かない状態で1,200万ドルのARRビジネスを軌道に乗せました。これは業界の常識では考えられないことです」と、Kelvin Chua氏は当時を振り返ります。

かつての状況は、現在とは大きく異なっていました。断片化したツール群、膨らみ続けるコスト、および監視インフラの維持管理のためだけに増え続ける人員。ツールが約束する効果と、実際のビジネス要件とのギャップは広がる一方だったと言います。

2014年にKelvin Chua氏が入社した当時は、創業者以外で社員は彼だけで、唯一のエンジニアでした。

3人の創業者からシステムの構築を託された彼は、自らの手で基盤を創り上げています。その後10年間にわたり、同社がシンガポールの通信スタートアップからアジア、ヨーロッパ、アフリカ、太平洋地域、中南米にまたがる多国籍企業へと急成長を遂げる中で、Chua氏はインフラ責任者、データ戦略リーダー、チーフアーキテクト、DevOpsおよびSREのトップなど、必要とされるほぼすべての技術的役割を歴任していきました。最終的には、新規事業を生み出すコーポレートベンチャー組織の責任者を務めるに至ります。

こうした幅広い経験を通じて、Chua氏は通常の技術リーダーが持ち得ない大局的な視野を持つことになります。オブザーバビリティの選定を誤ることが、財務、人員、およびビジネスの成果にどれほど破壊的な影響を与えるかを、誰よりも身に染みて理解していました。

ツール断片化がもたらす代償

2018年当時、Circlesは既存のプロプライエタリなオブザーバビリティプラットフォームを順調に運用していました 。複雑化するマイクロサービスアーキテクチャの可視化が不可欠だった同社にとって、当時市場で最も強力なAPM製品を採用した判断は合理的なものでした。

しかし同時に運用していた商用ELKスタックは、ライセンス費用とは異なる、人的リソースの深刻な不足という問題を抱えていました。新しい市場での展開やKubernetesクラスターの追加を行うたびに、Elasticsearchを管理できるエンジニアがさらに必要になったのです。Chua氏は、「サービスを立ち上げるたびに、Elasticsearchの維持管理のためだけに人員を何倍にも増やさなければなりませんでした」と、当時のジレンマを吐露しています 。

他社のプロプライエタリなツールも検討したものの、無駄のないスリムな組織体制を維持したい同社にとって、移行コストを正当化できるほどの経済的メリットは見出せませんでした 。

新たなアプローチの模索

Chua氏は長年にわたりGrafanaに注目していました 。もともとは既存のAPMツールと並行してオープンソース版のGrafanaを運用しており、そのエコシステムの優れた操作性を評価していたものの、OSS版を自社で保守・運用する負担が導入の大きな壁となっていました。「2018年当時は自社運用の負荷が高すぎたため、Grafana単体では必要な要件を満たせないと判断せざるを得なかった」と言います 。

その状況を一変させたのが、Grafana Labsによるマネージドサービス「Grafana Cloud」の提供開始でした 。

同社にとっての最初の導入のきっかけは、メトリクスやトレースではなく、ログの管理でした 。2021年、Kubernetesがアーキテクチャの基盤となる中で、ログ集約の重要性が急速に高まっていきます 。複数のKubernetesクラスターを中央集約型のログ管理なしで運用することは不可能であり、検討した主要なログベンダーは例外なくElasticsearchを基盤としていました 。これは、彼らがまさに脱却しようとしていたインフラ課題そのものだったのです 。

これに対し、Grafana Labsが開発したオープンソースのログ集約システム「Loki」は全く異なるアプローチをとっていました 。フルテキストのインデックスを作成せず、ラベルのみでインデックスを構成する軽量なLokiは、運用の複雑性を排除する理想的な選択肢でした 。さらに、Grafana Cloudによるホスティングサービスの開始により、最大の懸念だった運用管理の負担も解消されます 。Chua氏は、「Lokiが登場して実際に試したとき、その圧倒的な軽量さに驚かされました。運用保守をGrafana Labsに任せられるようになったことが、すべてのログをGrafana Cloudへ移行する決定的な要因となりました」と説明しています 。

そこから、監視スタックの段階的な拡張を進めていくことになります。時系列メトリクスの管理においてInfluxDBをPrometheusに置き換えたほか、Kubernetes Monitoring機能の導入によりクラスターのオンボーディング作業は劇的に簡素化されました 。さらに、Amazon EKS環境向けにCloudWatch統合を活用したことで、AWSからデータをGrafana Cloud側に複製することなく、直接メトリクスをクエリする非常にスマートなクエリ運用が実現しています 。Chua氏は「データを二重に持つ必要がなく、CloudWatchから直接クエリできる仕組みは非常に洗練されている」と評価しています 。

開発チーム文化の変革

他社プラットフォームからGrafana Cloudへの技術的な移行は大きなプロジェクトでしたが、Chua氏はそれ以上に、社内にもたらされた文化的変化の価値を強調しています 。

従来のモデルでは、開発者はダッシュボードの構築やアラート対応をSREやDevOpsチームに全面的に依存していました 。この構造は、開発スプリントにおける摩擦を生み出し、インシデント対応のボトルネックとなっていたため、チームが迅速に動くための大きな障壁として機能していました 。

Grafana Cloudの導入は、この力学を根本から変える契機となりました 。Chua氏は「Grafanaは非常に使いやすいため、開発者が自分自身で可視化や設定を行えます。現在では、コードの作成から計装、アラート定義、インシデントへの対応まで、開発者が主権を持ってシステム全体を把握する体制へとシフトしています」と語り、現場主導の運用への手応えを示しています 。

この文化的な変革は、単なる理想論ではなく、実際の新ビジネスの現場で過酷なテストにかけられることになります 。

専任DevOpsゼロでの挑戦

Circlesの社内ベンチャー事業として立ち上げられた「Jetpac」は、従来のAPMやELKスタック、および専任のDevOpsチームを一切排除し、完全にGrafana Cloudを中核に据えてスケーリングされました 。

Jetpacが専任のDevOpsやSREを一人も雇用することなく、ARR 1,200万ドルという驚異的な規模まで成長を遂げたというのは驚くべき出来事です。

この不可能とも思える運用を支えたのが、プロプライエタリなツールには存在しない「オープンソースコミュニティ」の力でした 。Chua氏はこれを戦略的な強みとして何度も挙げています 。

エンジニアが未知の技術的領域に直面した際、オープンソースコミュニティにはすでに膨大な知見が蓄積されています 。「前作の商用APMツールではベンダーのサポート窓口に依存せざるを得ませんでしたが、Grafanaエコシステムでは誰かが同じ問題を解決して情報を共有してくれているため、解決策をすぐ見つけ出せます」と、Chua氏はそのコミュニティの重要性を指摘しています。

今後の展望 

Jetpacでの成功から得られた学びは、AIネイティブとしてゼロから構築されている同社の最新プロジェクト「Project Black」に全面的に継承されています 。

Chua氏は「Project BlackはAIネイティブな設計を採用しているため、人間の手を煩わせるインシデントそのものを発生させないことを目指しています。異常を検知したGrafana Cloudが自律的にワークフローを起動し、AI自身が自動修復を行う仕組みを構築しています」と語ります 。ここでは、サービス間の深い依存関係を詳細に分析するため、Tempoによる分散トレーシングが非常に大きな役割を担うことになります 。

Chua氏にとって、なぜGrafana Cloudが新規事業のデフォルトの選択肢となったのかという問いに対する答えは極めて明確です。実績の証明、人員計画の整合性、コミュニティの存在、およびビジネス要件の進化に追従するプラットフォームの成長力にあります 。

「Grafana Cloudがなければ、Jetpacも、Xploreも、Project Blackも誕生していなかったでしょう。これらの新規事業を立ち上げ、軌道に乗せることは、同プラットフォームなしには不可能だったと確信しています」と、Chua氏は確固たる信頼を口にします 。


企業プロフィール

  • 業界: 電気通信 
  • 企業規模: 1,000人以上 
  • 本社所在地: シンガポール 
  • 採用製品・プロジェクト: Grafana Cloud Logs、Grafana Cloud Metrics、Grafana Cloud Traces 
  • 主な成果: DevOpsエンジニアなしでのARR 1,200万ドルビジネス(Jetpac)の創出 、運用インフラコストの最適化