【ObservabilityCON Tokyoレポ】実装フェーズに入った「次世代オブザーバビリティ」。AI活用のリアルに迫る
※本記事は後編です。前編はこちら
オープンソースのデータ可視化・監視ツール「Grafana」を開発・提供するGrafana Labsは2026年3月17日(火)、TODA HALL & CONFERENCE TOKYOにて、オブザーバビリティの最新動向と実践的な知見を共有するグローバルイベント「ObservabilityCON on the Road 2026 Tokyo」を開催した。

このイベントにはGrafana Labsの共同創業者・アンソニー・ウッズ氏や新規プロダクト担当シニアディレクターのマーク・チポーラス氏といったエグゼクティブ陣が来日し登壇。AIの進化により大きな転換点を迎えているIT運用やSRE、DevOpsの現場が直面する課題を背景に、「次世代のオブザーバビリティはどこへ向かうのか」について、グローバルな視点と日本市場の文脈を交えた講演が行われた。
午前10時のオープニング基調講演を皮切りに、計8つのセッションを実施。さらに、1時間のネットワーキングも設けられた。会場は満員御礼で、ブースでは、登壇者やスポンサー企業の担当者に直接質問ができるなど、活発な交流が見られた。イベントの後編をお届けする。


【第5部】必要なデータだけを集めてコストと効率を両立する「オブザーバビリティ戦略」
ランチタイム後、午後最初の講演ではGrafana Labsのシニアソリューションズエンジニア、⻆田勝義氏が登壇。必要なデータを必要な分だけ収集しつつ、コストを管理するオブザーバビリティの考え方について語った。Grafana Cloudは利用状況に応じて収集するデータ量を調整することで無駄を抑え、価値のある情報に集中できる。

(⻆田勝義氏)
さらに⻆田氏は、「AIを活用した分析やコストの可視化によって調査時間を短縮し、問題解決により多くの時間を使える環境が整う」と説明。効率とコストのバランスを取りながら運用していく重要性を解説した。

【第6部】分散した監視データを統合し、運用効率と可視性を高めるJimdoの取り組み
第6部ではJimdoのシニアSREであるミチャ・アーデバー氏が登壇し、監視データをGrafana Cloudへ集約した事例を紹介した。これまでは複数のツールにデータが分散していたため、情報の関連付けが難しく、データを十分に活用できていないという課題があったという。これらを一元化したことでインシデント対応の迅速化に加え、チーム間の連携や運用状況の可視化も改善された。

(ミチャ・アーデバー氏)
最後にミチャ氏は、「複雑化した監視環境をシンプルに整理することこそが、運用の効率と精度を高める鍵である」と語り、講演を締めくくった。

【第7部】Grafana Cloudが支える「オープンスタンダード運用」の最適解
第7部で登壇したGrafana Labsのテッド・ヤング氏は、「OpenTelemetryとPrometheusを活用したオブザーバビリティの実装」を解説した。講演の中で特に語られたのは、オープンスタンダードを前提としたデータ収集と運用の最適化について。印象的だったのは標準規格の活用が広がる一方、実運用では設計や選択に悩む場面が少なくないという指摘だ。

(テッド・ヤング氏)
講演ではGrafana Cloudが両者をネイティブにサポートし、導入や運用の負担を抑えられる点が紹介された。あわせて、カスタマイズやコスト最適化にも触れながら、オープンスタンダードを軸に無理のない運用を続けていく重要性も語られた。

【第8部】ユーザー体験から捉え直す、オブザーバビリティの新しい視点
イベントを締めくくる最後のセッションには、Grafana Labsの加藤颯太氏が登壇。ユーザー視点でシステムの信頼性を可視化する手法を解説した。加藤氏は、「システム内部の監視だけでは不十分であり、実際のユーザー体験を起点に状況を捉える必要がある」と強調。特に、システム上は正常に見えてもユーザー側で問題が起きているケースに触れ、その乖離を埋める重要性を指摘した。

(加藤颯太氏)
講演では3つのツールを組み合わせて「検知・特定・検証」を一貫して行う具体的なワークフローを紹介。ユーザー体験を軸とした多角的な可視化こそが、真の信頼性向上につながると締めくくった。

イベント全体を通して
今回のイベントでは、AIを活用したデータの最適化やインシデント対応の自動化、オープンスタンダードの実装、ユーザー体験を起点とした可視化など、オブザーバビリティにまつわる多角的なテーマが取り上げられた。実際の導入事例も交えながら、現場のリアルな課題に踏み込んだセッションが続いた。
AIの台頭によってオブザーバビリティの役割は「監視」から「意思決定の支援」へと変わりつつある。その変化の中で求められるのは、ツールの刷新だけでなく、運用チームの動き方そのものを見直すことだろう。
満員の会場とネットワーキングでの活発な議論が示すように、日本市場でもこのテーマへの関心は確実に高まっている。ObservabilityCON on the Road Tokyo 2026は、その熱量を肌で感じられる場となった。次回の開催も、ぜひ注目してほしい。
