「自社開発」「購入」それとも「オープンソース」? GrafanaのAI搭載オブザーバビリティにおける選択肢

「自社開発」「購入」それとも「オープンソース」? GrafanaのAI搭載オブザーバビリティにおける選択肢

2026-02-241 min
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エンジニアリングの世界には、いつまでも消えない問いがあります。どのチームもいずれ直面するのが、この問いです。 

「自分たちで腕まくりしてツールを構築するか、それとも既製のものを購入するか?」

この選択は、チームの開発スピードを加速させることもあれば、足かせになることもあります。

AI駆動のオブザーバビリティの台頭により、このおなじみのソフトウェアの難題が、より高いリスクとより速い技術変化を伴って再浮上しています。リーダーたちは今、次の判断を迫られています。

  • AI機能を自社開発するために時間を投資すべきか?
  • 統合、保守がされ、テレメトリスタックと共に進化するエンドツーエンドのAIソリューションを導入すべきか?

 Grafana Labsは、こうした判断に頭を悩ませる組織を日々見てきました。その中でよく耳にするのが、「自作か購入かの二択しかない」という誤解です。しかしGrafanaコミュニティには、以前から第三の選択肢がありました。自作と購入のあいだを埋める、オープンソースという道です。

選択肢を理解する

実際にはこの選択は、異なる分岐に向かう3車線の高速道路に近いイメージです。各車線のスピード、コントロールの度合い、メンテナンスの負担はそれぞれ異なり、たどり着く先も変わってきます。

詳しく見ていきましょう。

A forked road leads to a city labeled "Open Source," with trees marked "Build" and a beach with palm trees marked "Buy."

レーン1. 自社開発(Build):最大のコントロール、最大のオーバーヘッド

AI駆動のオブザーバビリティ機能を完全に自社内で構築する組織もあります。これには以下のような作業が伴います。

  • LLMおよびエージェントのオーケストレーション設計
  • テレメトリシグナル全体にわたる、自然言語プロンプトからクエリ生成への接続
  • コンテキストのためのエンベディング(埋め込み)パイプラインの構築
  • モデルドリフトとプロンプトライブラリの管理
  • インターフェース、RBAC、ワークフローの作成
  • マルチシグナル相関ロジックのサポート
  • システムの継続的な保守、スケーリング、アップグレード

もし、AIを活用したオブザーバビリティ体験を提供すること自体が自社のコアとなる差別化要因であるなら(例えば、あなた自身がオブザーバビリティベンダーである場合など)、このレベルの投資は理にかなっているかもしれません。

しかし、大多数のチームにとって、「自社開発」は有意義な結果が出るまでに数ヶ月にわたる部門横断的な作業を要し、その後も長期的な投資が必要になることを意味します。業界の調査でも繰り返し示されていますが、AIシステムを社内で構築することは、単にモデルを統合する以上の作業を伴います。パイプラインの構築、インフラの運用、システム信頼性の確保などを、本業の製品開発と並行して行う必要があり、結果として市場投入までの時間が遅れることが多々あります。

レーン2. オープンソース:柔軟かつ強力、ただしAIソリューションとしては不完全

オープンソースこそ、Grafanaの真価が発揮される領域です。開発チームは以下のことが可能です。

この「中央車線」は、AI搭載のオブザーバビリティを検討し始めた多くの組織にとっての出発点です。オープンソースなら、ゼロから構築する必要はありません。テレメトリの収集、保存、クエリのための実績あるツールがすでに揃っており、オープンスタンダードに基づいて大規模で活発なコミュニティが継続的に進化させています。この柔軟性があるからこそ、システムや要件の変化に合わせて、オブザーバビリティのワークフローを試行・拡張・最適化していくことができます。

しかし、オープンソースのオブザーバビリティはあくまで「基盤」であり、完結したAIソリューションではありません。その基盤を利用可能なAI体験へと変えるには、オープンソースが標準では提供していないシステムが必要になります。

エージェントのオーケストレーション、プロンプトの設計とバージョン管理、モデルの選定とチューニング、そしてAIの挙動に対する継続的な評価について、独自のアプローチを設計・運用しなければなりません。コンテキストをどう組み立てるか、回答をどう検証するか、障害をどう処理するか、そしてデータや利用パターン、期待値の変化に応じてシステムをどう改善していくか。これらすべてを決定する責任があります。この追加の責任こそが、オープンソースの柔軟性と表裏一体の側面です。

一部の組織にとって、このトレードオフは必須条件でもあります。オープンソースは、マネージドサービスでは得ることが難しいレベルのコントロールと透明性を提供します。データがどこにあり、システム内をどう流れ、どのコンポーネントがアクセスできるかをチーム自身が決定できます。厳しい規制環境や、エアギャップネットワーク、厳格な内部コンプライアンス要件を持つ組織にとって、オープンソースが唯一の現実的な選択肢となり得ます。

こうした制約を持たない組織にとっては、柔軟性と継続的な運用負担のあいだで生じるジレンマが、マネージドアプローチを検討するきっかけになります。

レーン3. 購入(Buy):自社の環境に合わせてすぐに使えるAIの知性

どのエンジニアリングチームに聞いても、返ってくる答えは同じです。「仕事量は減らないのに、求められることは増え続けている。」

リソースが逼迫している環境では、1分1秒が重要です。チームの時間と集中力を守る必要があります。自社のコアコンピテンシーを直接支える仕事にこそ注力すべきであり、それ以外については、負担を軽減してくれるソリューションに頼るのが合理的です。

多くの組織がマネージドソリューションに目を向けるのは、自分たちで作れないからではありません。単に、チームの時間の使い方として最適ではないからです。エンジニアがビジネスの本質ではない業務から解放されれば、その分、本当に成果につながる仕事に時間を割くことができます。

そして、オブザーバビリティツール(特にAI駆動のもの)を作ることこそが、私たちのコアコンピタンスです。

Grafana Labsでは、10年以上にわたり、チームがシステムを理解し、探索し、運用するのを支援してきました。この積み重ねが形にしてきたのは、プラットフォームだけではありません。エンジニアの日常業務を本当の意味で変える、「実務で使えるAI」を作る、その取り組みもまた、長年の経験が突き動かしてきたものです。私たちの目標は、ダッシュボードやノイズを増やすことではなく、手間を減らし、ワークフローを効率化し、より的確な判断をより速く下せるようにすることです。

だからこそ、私たちはGrafana CloudにAI Assistanceの2つの柱を構築しました。

  1. Grafana Assistant:Grafanaエコシステム全体におけるあなたの副操縦士(コパイロット)です。自然言語での対話を通じて複雑な操作をサポートし、クエリの生成と改善を支援し、テレメトリのギャップを埋めるガイドとなり、初心者から熟練者まで誰もが素早く回答を得られるようにします。
  2. Assistant Investigations:専門家チームのようにあなたの隣で働きます。関連するシグナルを継続的に集約し、インサイトを提示し、原因の候補を特定し、問題解決の過程を通じてあなたと協働します。すべての詳細を自分で追いかけなくても、今何が起きているのかをプロアクティブに把握できるよう支援します。

これらの機能はどちらも、明確な意図を持って構築されています。複雑なシステムの運用を、より簡単に、より速く、そしてはるかに負担の少ないものにするためです。その裏側では、Grafana AssistantとAssistant Investigationsをエンジニアリングチームにとって本当に役立つものにするために、多大な労力を注いでいます。オブザーバビリティにおけるAIは、一度作って終わりではありません。常に改善し続けるものです。

これらのAI機能が学習し、適応し、現場のエンジニアのニーズに応え続けるための基盤として、私たちは複数のレイヤーを構築しています:

  • コンテキスト認識型モデルオーケストレーション: クエリ生成からシグナル相関、根本原因分析の支援まで、特定のタスクに最適なモデル、ツール、検索方法は何かを分析します。このオーケストレーションによって、AIは「どう支援すべきか」「いつ深掘りすべきか」「いつ重要な情報を引き上げるべきか」をより的確に判断できるようになります。
  • 継続的な評価と改善のサイクル: すべてのリリースには、実際のユーザーとの対話、エッジケース、オブザーバビリティにおける新たなパターンからの学びが反映されています。プロンプトを洗練させ、推論戦略を調整し、テレメトリの進化に対するシステムの理解を広げています。この継続的な反復により、AIは「1年前に必要だったもの」ではなく「今チームが必要としているもの」に適応し続けます。
  • テレメトリシグナル全体への深い統合: Grafana AssistantとAssistant Investigationsは独立した体験ではありません。ダッシュボード、クエリ、メトリクス、ログ、トレース、プロファイル、アラートなど、あらゆる要素に組み込まれています。この統合があるからこそ、AIはより豊富なコンテキストをもとに動作し、スタック内の複数コンポーネントをまたぐワークフローをサポートできます。
  • オープンインターフェースによるカスタマイズと拡張性: AIを自社環境にフィットさせるための手段を幅広く提供しています。カスタムMCPサーバーを通じた社内システムへの接続、ドメイン固有のルールやメタデータによるAIの強化、調査をガイドするPlaybookの作成、推論や回答を導く独自の知識ソースの統合などが可能です。これにより、組織はGrafanaのAIを社内のコンテキストに合わせつつ、Grafanaが保守する基盤モデル、オーケストレーション、オブザーバビリティに特化したロジックの恩恵を受けることができます。

現在、多くの組織が「ベンダー提供のAI機能をどこで使い、社内ツールやデータと深く連携する独自のエージェントシステムをどこで構築するか」という問いと格闘していることを私たちは知っています。しかし、この2つは二者択一ではないと考えています。

GrafanaのAI機能は、アラートのサマリー、クエリ生成、根本原因分析など、よくあるオブザーバビリティのワークフローを、ゼロから作り直すことなく加速できるよう設計されています。一方で、社内ナレッジグラフやカスタムLLMエージェントなど、さらに踏み込んだ活用を目指す組織には、GrafanaのオープンAPI、データモデル、プラグインエコシステムがその道を開きます。

私たちの哲学は常に、オープンで自由に構成できるソリューションを提供することです。つまり、お客様が1つのブラックボックスなソリューションにロックインされるのではなく、Grafanaと自社独自のAIイノベーションを自由に組み合わせて使ってほしいと考えています。

Grafanaエコシステムの美点:1つの道に縛られることはない

チームがオブザーバビリティの旅の初期段階にいようと、大規模に運用していようと、問題は単に「自社開発か、購入か」ではありません。「将来の扉を閉ざすことなく、最速で成果にたどり着ける道はどれか?」ということです。

Grafanaエコシステムの真の強みはここにあります。

  • いつでも車線変更が可能: 間違った決定にロックインされることはありません。
  • オープンに始める: 必要な場所で作り(Build)、加速のために買う(Buy)ことができます。
  • 3つの車線すべてが同じエコシステムを共有: 接続された高速道路のようなもので、スピードを落とすことなくレーンを移動できます。

OSSの活用、Grafana Cloudの導入、専門的な社内システムの構築——どの道を選んでも、Grafanaが共通の基盤となり、オブザーバビリティ戦略が時間とともに分散・断片化していくことを防ぎます。

  • OSSから始めたチームは、データモデルを再考することなくGrafana Cloudへ移行できます。
  • GrafanaのAIを採用したチームも、オープンAPIを通じて社内のエージェント、ルール、知識をプラグインできます。
  • カスタムシステムを構築するチームも、Grafanaがサポートするオープン標準と統合することで、新たなサイロ化を防げます。

オブザーバビリティとAIにどのようなアプローチを取っても、このエコシステムは一体性を保ちます。オープンで、柔軟に組み合わせ可能で、あなたと共に進化するよう設計されています。そして私たちのコミットメントはシンプルです。私たちを頼りにしてくれるすべてのチームにとって、GrafanaのAIを可能な限り便利で、信頼性が高く、効果的なものにするために、進化を続けていきます。

オブザーバビリティにおけるオープンソースとAIの詳細

このトピックについてさらに詳しく知りたい方は、以下の最近の動画をご覧ください(英語):

参考動画はこちら

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