2026年のオブザーバビリティにおけるAI:巨大なポテンシャルと、拭いきれない懸念

2026年のオブザーバビリティにおけるAI:巨大なポテンシャルと、拭いきれない懸念

2026-03-181 min
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オブザーバビリティにおけるAIの役割は急速に進化していますが、第4回目となる年次調査データからは一つの事実が浮き彫りになりました。それは「ポテンシャルは本物だが、慎重な見方も根強い」ということです。

現場の実務家たちは、異常の早期発見、トレンドの予測と把握、根本原因分析(RCA)の支援、そして新規ユーザーの習熟スピード向上といった面で、AIの活用に圧倒的な価値を見出しています。もちろん、「期待」と「結果」は別物です。オブザーバビリティの実態に関する最大規模の調査データは、人間による監視のない、AIの完全な自律アクションに対する懸念も示唆しています。

本記事では、広範なオブザーバビリティコミュニティがAIをどう捉え、それがワークフローや未来にどう適合するかを深掘りします。Grafana Labsがお届けする「2026年版オブザーバビリティ実態調査」のデータに基づき、潜在的なユースケース、信頼性、導入の障壁、そしてAIワークロードを監視するためのオブザーバビリティの採用状況について見ていきましょう。

注: 1,300人以上の回答者がAI、オープンソース、拡大するオブザーバビリティの範囲、そして今日採用されているプラクティスについて語った2026年版オブザーバビリティ実態調査(フルレポート)もぜひご覧ください。また、オープンソースの現状に関する詳細分析や、業界・役割・地域・組織規模でフィルタリングして自社と比較できるGrafanaダッシュボードで、統計データを直接分析することも可能です。

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AIデータと、私たちの生きる時代

データに踏み込む前に、明らかな事実を確認しておきましょう。AIの進化は極めて、本当に極めて速いということです。

昨年10月から1月に調査回答を収集して以来、AIモデルは劇的に改善されました。多くのチームにとって、「エージェント型ワークフロー(Agentic workflows)」が概念から現実へと変わる、地殻変動のようなシフトがすでに起きています。

とはいえ、この調査は、どのようなツールやモデルを導入するかに関わらず「人々がAIに何を求めているのか」を理解するために設計されました。「オブザーバビリティにとって価値のあるAI機能とは何か?」「信頼性を担保するための適切な制御(ガードレール)は何か?」「利用を妨げる要因は何か?」――。これらの問いと収集されたデータは、技術が進化した今でも色褪せることはありません。

AIはオブザーバビリティに待望の生産性向上をもたらす

オブザーバビリティプラットフォームにAIを組み込む6つの潜在的なユースケースについて尋ねたところ、圧倒的多数の回答者が各シナリオにおいて「価値がある¹」と考えていることがわかりました。

  • ダッシュボード、アラート、クエリの生成: 92%
  • ダウンタイムが発生する前に、異常やその他の問題を早期に発見する: 92%
  • トレンドの予測と把握: 91%
  • 根本原因および相関分析の支援: 91%
  • 新規ユーザーがシステムの関連部分を迅速に理解できるよう支援: 89%
  • 自律的なアクション(自動復旧やワークフローのトリガーなど): 77%

AIが以下のことを行える場合、どの程度の価値がありますか?

ダウンタイムが発生する前に、異常やその他の問題を早期に発見する

全体として広範な合意が得られている一方で、ユースケースによって価値の感じ方には差があります。例えば、75%の回答者が「ダウンタイム前の問題の早期発見」を「非常に価値がある」または「業務に不可欠」と回答したのに対し、「新規ユーザーのシステム理解支援」において同様の回答をしたのは63%に留まりました。

信頼の溝:「AIによる支援」vs「AIによるアクション」

上述のユースケースに対するAI利用への懐疑的な見方は極めて低い(わずか4〜5%)結果となりました。しかし唯一の例外は「AIによる自律的なアクション」で、懐疑的な割合は15%に跳ね上がります。また、自律的なアクションを「非常に価値がある」または「不可欠」としたのは49%に過ぎず、「期待されている価値」も最下位でした。組織はビジネスに不可欠なワークロードの稼働を維持するためにオブザーバビリティを頼りにしています。そのため、重要な決断をAIに丸投げすることに実務家が依然として慎重であるのは、理にかなった結果と言えます。

組織規模も、自律的なAIワークロードに対する安心感に影響しています。従業員100人以下の小規模な企業では、AIによる自律的なアクションに対して35%が「懐疑的」または「価値を感じない」と回答しており、1,000人以上の企業の16%と比較して慎重な姿勢が目立ちます。AIは小規模なスタートアップにとって「偉大なイコライザー(格差を埋めるもの)」と見なされることが多いだけに、この両者のギャップは興味深い点です。

最大の障害は「恐怖」ではなく「摩擦」

回答者の4分の1以上(26%)が、重要なタスクでAIを使用する際の最大の障壁として「必要なコンテキスト(文脈)の手動入力が多すぎる」ことを挙げました。これは2位以下に大差をつけた最も多い回答です。

重要なタスクでAIの利用を妨げる最も可能性の高い制限(ボトルネック)は何ですか?

しかし、この回答もユースケースによって見え方が変わります。例えば、最も意見が分かれた「AIによる自律的なアクション」を「不可欠」と考える層では、32%が「手動入力やコンテキスト」を最大の障壁に挙げました。一方で、自律的アクションに「価値を感じない」層では、「AIが頻繁に壊れる、あるいは適応できないこと(31%)」を主な障壁として挙げています。

これはAI推進派と慎重派の間の分断を示唆しています。推進派は「AIをいかに組織に適合させるか」を懸念し、慎重派は「AIが本当に期待通りに動くのか」という根本的な信頼性を懸念しているのです。

AIはオブザーバビリティにおいて、まだ「最優先事項」ではない

新しいオブザーバビリティツールを選定する際、AI機能を重要な基準として挙げた回答者はわずか15%でした。これはコスト、使いやすさ、相互運用性よりも低い優先順位です。今この瞬間に同じ質問をすれば数値は変わるはずですが、最大3つまで選択可能な条件においてこの順位であることは、依然として示唆に富んでいます。

新しいオブザーバビリティツールの選定において、最も重要な基準は何ですか*?

新しいオブザーバビリティツールの選定において、最も重要な基準は何ですか*?

*最大3つまで選択可

役割によっても顕著な違いがあります。エンジニアリングディレクターの27%がAIを選定基準に挙げているのに対し、プラットフォームチームのメンバーで同様の回答をしたのはわずか10%でした。

いずれにせよ、「コスト」が普遍的な選定基準のトップであることに変わりはありません。AI機能が活用されるにつれ、間違いなくそれ相応のコストも発生します。今後数ヶ月、これらの基準がどう相互作用していくかは興味深いところですが、ほとんどの組織は、導入するあらゆるAIサービスから「実際の価値」を得ることを引き続き最優先すると考えられます。

正確性と説明責任こそが重要

システムの運用において正確かつタイムリーな意思決定を行うには、目にしている情報を信頼できなければなりません。AIにおいても「ガベージ・イン、ガベージ・アウト(ゴミを入れればゴミが出る)」という古い格言が当てはまるのは当然で、回答者の95%が「AIが推論プロセスを示すこと」を重要²だと考えています。

AIツールがその推論(例:情報源、クエリロジック、信頼度レベルなど)を説明することは、あなたにとってどの程度重要ですか?

これには、情報源の提示、クエリロジック、信頼水準の表示が含まれます。実務家たちは、AIの結果を盲目的に信じるのではなく、AIが取るあらゆるアクションに対して「監視・監督(オーバーサイト)」を維持したいという明確な意思を持っています。

AIを「不可欠」と考える層ほどAIに推論過程を求めており、一方でAIに対して懐疑的な層も、AIが推論を説明することを「不可欠」と考えています。つまり、AIを全面的に受け入れているか、まだ迷っているかに関わらず、「透明性」への要求は全方位で極めて高いのです。

LLMベースのアプリケーションのオブザーバビリティ

オブザーバビリティにおける7つの新たな領域について尋ねたところ、LLMベースのアプリケーションのオブザーバビリティは最も採用が遅れており、29%が「検討外」、14%が「本番環境で使用中」と回答しました。それでも、2025年に42%が「検討外」、5%が「本番環境で使用中」だったことを考えると、大きな変化です。

新たなオブザーバビリティ領域の採用状況

ビジネスオブザーバビリティ

正直なところ、この統計は今年の調査の中で最も「移ろいやすい」数値でしょう。変化のスピードを考えれば、現在では前四半期よりもはるかに多くの組織がエージェント型ワークロードやLLMベースのアプリを構築しているはずです。例えば、アナリスト企業のGartner社は、企業のアプリケーションの40%が今年中にAIエージェントを統合すると予測しています(昨年は5%未満)。

あるいは、この数値は意外と現実に近いのかもしれません。ユーザーからの関心は高まっていますが、ハイプ(熱狂)は常に現実に先行するものであり、この進化し続ける領域において各組織の導入ステージは様々です。いずれにせよ、この数値は2026年を振り返った際に、どれほどの激変が起きたかを知るための優れた指標となるでしょう。

調査とAIに関する総括

過去最大規模となった今年の調査に参加してくださった皆様に感謝いたします。10月から1月の間に、76カ国から1,300人以上の実務家やリーダーが参加してくださいました。オンラインだけでなく、自社イベントやAWS re:Invent、KubeConなどの外部カンファレンスを通じて、世界中から声を集めました。

これほど多くの方々が考えを共有してくださったことは、オープンソースコミュニティの力を象徴しています。私たちはこの調査を、データを学び、共有したいすべての人のための「ゲートのない(公開された)資産」にすることに誇りを持っています。

私たちはユーザーにとって「本当に役立つAI」を作ることに投資しており、皆様のフィードバックを聞くことは私たちの活動の核心です。共有していただいた知見が、私たちの働き方、そしてより良い未来の形を作ります。知識と意見を共有していただき、ありがとうございました。

¹ 「ある程度価値がある」「非常に価値がある」「業務に不可欠」の回答の合計。

² 「ある程度重要」「重要」「非常に重要」「不可欠」の回答の合計。

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